21世紀アニメ表現論入門 後期宮﨑駿/ジブリを振り返る

デジタル化以降のスタジオジブリ 高瀬司/泉津井陽一

 高畑勲、宮﨑駿共に東映動画出身

 東映動画系  フルアニメーション&劇場長編 

 ロングショットを多用し実時間にあった時間進行 客観的

  例)ホルス、ラピュタ

 虫プロ系  リミテッドアニメーション&TVシリーズ 主観的な感情の高まり 

  例)明日のジョー

 高畑勲演出の画期性

  ロケハンに基づいた背景美術 

  何気無い生活描写の積み重ねによる客観的にリアリズム志向

  デジタル彩色とデジタルコンポジットの活用による水彩画風のルックの実現

  1999「となりの山田くん」3種類の動画を剛性する事で水彩画調を表現 

  セルの枚数 18万枚

   ラフな実線 彩色用の内線 塗り残し用の輪郭線

  2013「かぐや姫の物語」3種類以外に作画監督の修正 

   ペイントエリア用 髪の毛の質感2種類など

   アニメーターが書いた原画の線の勢いを活かす

  ジブリ レタスではなくtoonzを使用 原画から色を分解するツールを独自開発

 宮崎駿監督によるデジタルアニメ表現

   アニメの撮影→セルと美術背景を合成して入射光などのエフェクトを加える

   撮影台→2000年頃からPCでのデジタルコンポジットへ 

   TOONZ(ジブリ) AfterEfectsが一般的

  「もののけ姫」で半分がデジタル アナログのセルだと6枚が限界 

   モブシーン、ヒキ画の長いものをデジタルを利用

  デジタル化によって空間表現を拡張(例:風立ちぬ)

  1. 被写体深度

     レンズ的なピント表現 Zdepthを利用して奥行きを与えて空間的広がりを表現

     スキャナを使わずにデジタルカメラで背景を取込む場合あり 

     セル的なフィルムノイズや揺れを効果として入れる

     レンズのブラー 小人用にマクロレンズ

  2. カメラマップ

     3D空間上でカメラから絵を投影 「背景動画」をデジタルで表現

      テクスチャー的な貼り込み表現以上に空間的な統一感を生む

     パースマップ 絵の体裁をそのまま活かせる

     3Dシュミレーション後に作成することもある(例「君の名は」の視点移動)

     ハイライトが動くとリアリティが減るため別レイヤーにする ゲームの3DCGとは違う

 宮崎監督は使用目的を明確にし、効率に頼りすぎない 主観的、情緒的だが発火点は低い

  動きの遅い視点移動は張り付けを好む(3Dはスムーズすぎるため、あえてガタガタさせる)

 高畑勲監督は、好奇心が強くて新しいものの取入れに柔軟 客観的 冷静

*Q&A

 セルハーモニー セルに裏から描く 日本に一人だけ ハイライトから描き始める!

 美術ではなく撮影でバラのは画の一体感と監督チェックのため

 アニメのパンはフォロー(横移動)と混同されやすい

  パンはカメラが固定で首を振るアクションのため、背景の動きが大きくなり作業量増

  track up、track backも同様


折返し地点の以降の宮﨑駿 石岡良治

 ラピュタまでが前期 トトロ以降が中期 もののけ姫以降が後期

 アニメファンの評価が高いのは前期だが国民的映画作家になったのは後期

 前期 「少年の夢としてのガジェット」「少女幻想への批判」「ファンタジーとSF」

     ラノベ、落ちもの系

 後期 「自然と文明」「歴史との直面」「科学技術の暴走への警鐘」

    「ジェンダー認識」 断片化が進む

 鈴木Pが仕掛けた俳優の声優起用の戦略で、日本映画での特権的地位の確立

  女性キャラクターの変容

・宮崎駿監督の共通テーマ

   空間全体が異化され、一種の災害ユートピア状況が生まれる(水没都市など)

   セル画と背景画を分けて素材感を出し、物体配置を綿密にする事によりリアリティを高める

    (空間の整合性。法則性を持たせる)

   宇宙空間の断念 ⇄ 富野由悠季(ガンダム)

    「未来世紀コナン」壊滅的な状況の地球から脱出できず、

     ポストアプカリプス状況を生き抜く

  ジブリ論の共通要素の「自然描写」「四第元素」が主題

   大地からの離脱

   特定テクノロジー(核・ジェット機)への批判と偏愛(蒸気機関・レシプロ機)

   未来テクノロジー(飛行石/巨神兵/ロボット兵)および魔法と「許容可能な火」

   反戦的軍事マニア(機関紙連載)である事からの葛藤 戦車などは嫌い

  様々な主題を読み込みながら世界像を成立させる「事前の限定」の巧みさ

・後期宮崎駿特有の変奏

  「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」の受容の差異

  前者の網野善彦的日本中世史からの参照は賛否両論で相性が良くなかった

  後者は2002年アカデミー長編アニメ賞もあり「ユリイカ」の論調も好意的

  「ハウルの動く城」は批評的には低評価だが女性観客中心に人気有りが、

   状況論的には細田守監督の降板と木村拓也の声優起用に帰せられる

 ヒロインの位置が、女性観客が幻想を投影させやすい作風

 「千と千尋の神隠し」以降の作品の断片化、不整合

 「侵食する黒い物体」「テクノロジーについてのスタンス」

 作中で大きく変容(内的&視覚的)するヒロイン アクティブ&可愛くなる

 女性の異性愛的ファンタジーを描く事に成功 美形の男女 ユニセックスに描かれる

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